木造でもできる!耐火構造の質蔵

質屋/質店開業において一つの大きなハードルとして質蔵の建設/設置があります。

都道府県によっては耐火金庫のみでも質屋営業許可を受けられるところもありますが、
扱える品目に制限がかかってしまうため、とても限られた営業となってしまいます。

可能であれば貴金属だけではなく、ブランドバッグや高級時計なども取り扱いたいですよね?

今回はこの質蔵に求められる基準、また建築/設置のハードルを下げるための情報をお届けいたします。

質蔵に求められる要件「質屋の保管設備」


質屋はお品物の買取とは別に、お客様からお預かりした品物と引き換えにお金を貸し付けることを仕事としています。そのため、預かった品物を盗難や火災などの被害から守るために、堅牢な保管庫を設置することが義務付けられています。この保管庫は「質蔵」とも呼ばれ、質屋にとって必要不可欠な設備です。

保管庫の基準は都道府県によって多少異なりますが、例えば栃木県の場合、以下の条件を満たす必要があります。
キーワード: 『 都道府県名 質屋 保管設備 』 で検索すると出てくると思います。

栃木県公安委員会規則第14号
質物の保管設備の基準に関する規則
参照:https://www.pref.tochigi.lg.jp/reiki/reiki_honbun/e101RG00001782.html

新たに質蔵を設置する場合に求められる以上4カ条について説明します。

防湿構造


第4条 保管設備の内部には、壁及び床を板張り構造とする等防湿上の措置を講じなければならない。

お客様のお品物を預かるうえで湿気は大敵です。
特にブランドバッグなどの革製品の場合、日本の高い湿度により「カビ」や「シミ」など劣化がとても起こりやすくなります。

これは皆さんにも実施していただきたいことですが、紫外線からのダメージを防げる暗所、かつ湿気対策として風通しの良い場所でなるべく保管するようにしてください。

この湿度のコントロールについては質屋保管設備の規則においても明記され質屋の義務となっています。

防火設備


第5条 保管設備の主要構造部(以下「主要構造部」という。)は、次のいずれかに該当する構造でなければならない。
(1) 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第7号に規定する耐火構造
(2) 土蔵造
(3) 前2号に掲げるもののほか、公安委員会がこれらと同等以上の耐火性能を有すると認めたもの

(1)の建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第7号には以下のように書き記されています。

耐火構造壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

耐火建築物は、建築基準法上、最高水準の防火性能を有する建築物です。
その一つ下の準耐火構造で求められる延焼の抑制に加え建築物の倒壊も防止しなくてはなりません。

このように建築基準法上の耐火構造ではとても高い性能が求められますが、質屋保管設備の規則では「保管設備の主要構造部」としており、建物すべてではなく質蔵だけに限定されています。

こちらに関しては後でまたより詳しく説明します。

二つ目に、
保管設備の開口部には、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項に規定する特定防火設備を設けなければならない。
があります。

これは保管設備の開口部、つまり出入り口のドアに特定防火設備(1時間の遮炎性能をもったもの)を用いる必要があるということになります。

盗難予防設備


第6条 保管設備の開口部には、シャッター、鉄製扉等盗難防止のために有効な設備及び堅ろうな施錠設備を設けなければならない。

つまり簡単に壊して開くようなドアではダメということですね。
ただ、保管設備の開口部ドアには先述した特定防火設備(鉄扉)を使用しているはずなのでここは大丈夫だと思います。

二つ目に、
保管設備の適当な箇所に、防犯上必要な非常ベルその他の非常警報装置を設けなければならない。ただし、保管設備が営業所と同一の敷地内に設けられている場合において、営業所その他保管設備と同一の敷地内に設けられている施設に同様の装置があるときは、この限りでない。
があります。

こちらは店舗内接客スペースに限らず、質蔵の中からも操作可能な非常警報装置を設置していつでも外に非常事態を示せるようにしなさいという規定になります。

防そ設備


第7条 保管設備の出入口以外の開口部には、金網等ねずみの侵入を防止するための設備を設けなければならない。

これはそこまで気にする必要はないと思います。
建物内の部屋に外とつうつうな穴が開いているということはあまり近年ではありませんよね・・・
もし穴のある部屋を質蔵にしようとしている場合は塞いでください。

ヤマシチの保管設備要件の対処


「質屋の保管設備」の要件に対する実際に行った弊社ヤマシチでの対処/クリア方法について説明します。

防湿構造


ヤマシチの質蔵では床は木製のフローリング、壁、天井は石膏ボードとなっております。
また、エアコン、除湿器を24時間使用して日本の高温多湿な夏場においてもお品物を良い環境で保管できるようにしました。

防火設備


当初からお預かりしているお品物のセキュリティー面を考慮し24時間警戒/監視が可能な店舗兼用住宅の建設を考えており、まず質屋開業を考えるうえで最大の関門が耐火構造をもった建物の建設でした。

一般的な耐火構造の建造物というと、鉄筋コンクリート造などのビルやマンションだと思います。
私もそれを想像していました。

第5条 保管設備の主要構造部(以下「主要構造部」という。)「は」、次のいずれかに該当する構造でなければならない。

「は」つまり、「耐火構造」が求められる箇所は保管設備だけでよく、建物すべてが耐火構造である必要はないのです。

また、近年の技術の進歩により、木造(W造)でも「耐火構造」への適合が可能になりました。

弊社ヤマシチでは国交省告示第861号を用いて質蔵の構造を耐火構造とすることで「質屋の保管設備/防火設備」の要件をクリアしました。

「質物の保管設備の基準」については各都道府県の安委員会規則により変わってきますのでもし質屋の起業、質蔵の建設をお考えの方はまずは管轄の警察へ相談することをお勧めします。

盗難予防設備


ヤマシチでは盗難/強盗などの防犯設備として建物全体をセコム様へ監視、対応を依頼させていただきました。

建物外周には防犯カメラを設置し、住宅、および店舗に各種センサー、質蔵は外壁に接することのない完全内部となり、唯一の開口部である出入口は特定防火設備で人間の力では破壊できないような分厚い鉄製のドアとなっております。

上記仕様で警察からも許可を得ることができました。

防そ設備


こちらの要件に関してはヤマシチの質蔵の唯一の開口部は出入口のみとなるのでそもそも対処の必要がありませんでした。

まとめ


いかがでしたでしょうか?

年々減少を続けている全国の質屋/質店ですが、その要因としてまず始めるために必要なもののハードルがとても高いことが一つあると思います。
他には業界の高齢化、後継者不足でしょうか・・・

この記事をご覧いただき、少しでも質屋の開業についてご興味を持っていただき、
今後の質屋業界の発展につながればと心から望んでおります。

山内 佑介
代表取締役
初めての方にも抵抗なく、もっと気軽にご利用いただけるよう分かりやすくお伝えすることを心がけております。
質屋は「物を売る」以外にもその物で「お金を借りる」といった選択もできる便利なお店です。
質屋の便利について、当Webサイトで解説しています。


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などなどお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

ヤマシチ